最近、私の勤め先では古参のスタッフが次々と退職するという状況となっています。
事情は様々なようですが、サラリーマンという職業はなんとも儚いものだと感じざるを得ません。
そして、一歩間違えれば、自分自身もそのような立場になりうるのではないかという恐怖心と、「このまま現状に甘んじているわけにはいかない」という焦燥感に突き上げられそうです。
現代の約7割の仕事が「サービス業」と言われます。
そして、サービス業は別名「感情労働」とも言われ、自分の感情や心を圧し殺して「商品」として売る仕事と言われます。
現代社会には、心身ともに疲弊して毎日を魂の抜かれた人形のように過ごす人が多く見受けられるのは必然なのかもしれません。
かく言う私自身も、その疲弊して社会を漂う1人の中年なのです。
私は今、そういった状態から脱却しようともがいています。
そして、これまでなかなか決心がつきませんでしたが、ここに来ていよいよ、覚悟が固まったと思っています。
「独立する」
そこに向けて、歩み始めることにしました。
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40歳という年齢に達したとき、私は人生の半分を生きたのだと思いました。
そして、
「もうこれ以上無駄にできない」
という思いに駆られました。
「何かを成し遂げなくてはならない」
自分に言い聞かせました。
しかし、何をしたらよいのか?
何もわからなかったので、とりあえず、筋トレを始めることにしたのが3年ほど前。
そして、YouTubeで自己啓発系の動画を観るようになりました。
しかし、自己啓発系の動画をアップしているのは20代の若者ばかり。
最初は抵抗がありました。
「こんな人生経験もない若者に何がわかるのか」
と。
ですが、彼らの訴えをよくよく聞いていると、実はとても至極真っ当なことを訴えていました。
「早寝早起きしろ」
「健康的な食事をしろ」
「努力しろ」
「体を鍛えろ」etc.
子供の頃に、親や先生から受けた説教のような内容でしたが、おとなになってすっかり忘れてしまっていたことでもありました。
毎日、彼らの言葉に耳を傾けているうちに、少しずつ、影響を受けるようになりました。
食べたいものを食べて、飲みたいものを飲んで、仕事以外の時間はとにかく自堕落。
そんな生活を改めるようになりました。
彼らが特に強調していたのが、
「筋トレをしろ」
今になればよく分かるのですが、確かにボディメイクは自己啓発ととても親和性があります。
美しい身体は、単に筋トレをしているだけでは手に入りません。
食事を管理し、生活リズムを整え、睡眠をよくとり、ストレスをなくし、そしてトレーニングをして、初めて手に入ります。
つまり、自己規律がないと美しい身体には到達できないのです。
自己啓発系YouTuberたちが筋トレを勧めるのは、おそらく、それが自分自身に「自己規律」をもたらす一番の近道だと考えているからなのかもしれません。
とにかく私は、自分自身に変革をもたらしたいと思いながらも、なにからはじめてよいかがわからなかったので、とりあえず、筋トレをしたのでした。
そして2024年、今年の年頭に、実際にボディビル大会に出場するということを目標に掲げ、自分の努力を「他人の評価」にさらすことを決心しました。
これは結構大変でした。
でも、よく頑張りました。
実際のところ、ここ10年くらい、自分の中で一番がんばったと思います。
決心してから大会まで、だいたい3ヶ月弱くらいだったと思いますが、生まれて初めて、徹底した食事制限を行いました。
私はもともと、大の甘党ですので、とにかく甘いものを食べていないと気が済みません。
特にアイスやシュークリームなどの洋菓子が大好き。
しかし、大会に出場するためには、体脂肪を極限まで落とさなくてはならず、そのために最も口にしてはいけないものが甘いもの。
特に、糖質と脂質の塊である洋菓子は、「絶対」と言ってよいほど口にしてはいけないのです。
もちろん、トレーニングも大変でしたが、それ以上に私にとって大変だったのは、この食事制限でした。
大会に出場すると決めた以上、言うまでもなく優勝するためにトレーニングをするのですが、実際のところ、大会間近の期間は、勝つとか負けるとかどうでもよく、ただただ、大会が終わって好きなだけ甘いものを食べたいということしか考えていませんでした。
そんな厳しい時期を乗り越え、今年の6月、無事に大会出場を果たしました。
結果は、私が出場したカテゴリー16人中8位と、ちょうど平均点。
しかし、終了直後はそんなことどうでもよく、自分の出番が終わったと同時にコンビニに直行し、棚1列分くらいのケーキやお菓子、アイスクリームなどあらゆるものを買い込み食べまくりました。
そしてしばらくして、改めて自分の出場までの経緯について反省をしたところ、次第に結果に満足がいかずに悔しさが込み上げましたが、同時に、ボディビル大会に出場するという普通の人は考えないことを実行し実現したことには満足を覚えることができました。
ただ、ボディビル大会に出場したことで、自分の人生になにか劇的な変化が起きたのかというと、そうではありませんでした。
大会が終わって次の日も、また次の日も、昨日と同じ毎日が続くだけでした。
「自分で目標を立ててそれを達成」
だからと言って、自分の生活なり人生なりになにか大きな変化が生まれるのかと言えば、そんなことは決してなかったのです。
たとえ大きな偉業を成し遂げたとしても、その次の日からまた、同じ日常が続くのが現実なのだと思います。
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大会後しばらくして、また次の大会に向けて筋トレをしようか悩みました。
しかし、なんとなく筋トレには一つのピリオドを打ってもいいような気もしました。
確かに筋トレは好きですが、「自分の居場所」として最も適切ではないような気もしたからです。
ただ、ボディメイクをしたことによって、強い体と自信を手に入れることができました。
ここを出発点にして、さらにもっと上の次元を目指せないだろうか?
そう考えたときに
「格闘技の試合に出てみるのはどうだろう」
と思いつき、門を叩いたのがキックボクシングでした。
キックボクシングは、「強い」を目指すという意味では筋トレと親和的ですが、やはり格闘技なので別の意味の厳しさがあります。
初めてサンドバッグを蹴ったとき、そのあまりの硬さにびっくりしました。
練習初日は、数回サンドバッグを蹴っただけなのに、足の甲は真っ赤になり、足裏の皮はむけ、痛くて痛くて大変でした。
また、ミット打ちも少しやっただけで息が上がり、3分間という時間が永遠に感じるほどの長さでした。
よくプロの選手が、サンドバッグをバンバン蹴ったり、ミット打ちもものすごい威力でやったりしていますが、あれがどれほどすごいことなのかは、自分が実際にやってみて実感したところです。
次第に私はキックボクシングの魅力に取り憑かれるようになりました。
そして、次はキックボクシングの大会に出場し、チャンピオンベルトを獲ることを目標として掲げたのです。
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私が現在通っているジムは、週5日営業・不定休のため、私の予定と休業日が重なると、何日間も練習できない状態となります。
そんな折、自宅の近くに「暗闇キックボクシング」なるフィットネススタジオがあるのを知りました。
チャンピオンベルトを目指す以上、今の練習量では足りないと考えていた私は、その暗闇キックボクシングにも通うこととしました。
はじめは物珍しさや楽しさから、真面目に通っていたのですが、次第に物足りなさも感じるようになりました。
暗闇キックボクシングはあくまでフィットネスで、キックボクシングの「雰囲気」を楽しみながらエクササイズすることが目的。
フィットネスとしてはかなり完成されていると思いますが「ガチ」ではありません。
「これはちょっと違うな、、、でも、2年契約で割引適用してしまったぞ、、、どうしよう、、、」
ちょっと後悔していたのですが、その同じ施設内に、1日中出入り自由の、スクリーン上でレッスンが流れているホットヨガの部屋があることを思い出しました。
試しに一度出てみたのですが、、、
一言で言って、最高でした。
終わったあとの爽快感が半端なく、これまでやってきたトレーニングとはちょっと毛色の違うものでした。
もとを言えば私は筋トレからフィットネスを開始したのですが、筋トレは圧縮された筋肉を爆発的に使って身体を発達させる感じでしたが、ヨガはなんと言えばいいのか、身体を伸ばしてしなやかにするような感じ。
今まで凝り固まっていた私の身体が、ヨガをすることで少しずつ開放され、しなやかになっていくような感覚になりました。
そして、何より感動したのが、しばらく続けるうちに、長年悩まされていた腰痛が緩和。
さらに、キックボクシングでもキックの際の身体のブレがなくなり、トレーナーからもほめられるようになりました。
日常生活においても、階段の昇り降りにスムーズさを感じるようになるなど、やればやるほど、身体の変化を実感するようになったのです。
そして、ヨガはもともと瞑想の一種なので、単なる運動と違い、心のなかに静寂や平穏を求める志向があります。
日常生活を送っていると、どうしても嫌なことがあって心が乱れます。
ヨガを行う時間を通じて、自分の心の中が少しずつ落ち着いていく感覚も芽生えるようになりました。
こんなに素晴らしいフィットネスになぜ今まで気がつけなかったのか、と思うくらい、ヨガは私に恩恵を与えてくれています。
(ただし、私の身体はゲキカタでスキルも初心者そのものです、、、)
しかし、残念なことに、ヨガは「女性向け」というのが一般的なイメージです。
現に、私がいつも受けているクラスで私以外に男性のメンバーがいたことがあるのは、過去1回だけでした。
そして、施設内にはいろいろなクラスがあるのですが、実際にインストラクターが直接指導してくれるクラスに男性は入れません。
逆の意味で男女差別、と感じています笑
そこで私は、世の中の疲れ切ってしまった男性たちに元気を取り戻してもらうために、ヨガインストラクターになろうと思いました。
そして、男性女性問わず、誰もがレッスンを受けやすいクラスを自分で作って、みんなの中のエネルギーを再生してもらう。
まさに、今の自分が求めているものを自分で生み出し、そして、世の中と分かち合う。
素晴らしいビジョンが芽生えたのです。
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とりあえず、私はヨガインストラクターの資格をとるための通信学習をはじめました。
そして、ヨガを通じていつか独立しようという目標ができました。
また強くてしなやかな身体を作り、キックボクサーとしても活躍したい。
すでにリングネームも考えました。
ダルシム・ケンタロウ
「ダルシム」とは、私世代の男性なら誰しも一度はプレイしたことのある格闘ゲーム「ストリートファイター2」に出てくる、怪しげなキャラ。
格闘技のバックボーンが「ヨガ」で、手足が自在に伸びるというヨガに対する偏見に満ちたキャラクターです。
ダルシムへのオマージュを込めて…
ヨガをしながら、独立への道を探ります。